こうへいの音楽夜話 第35話

花(すべての人の心に花を)−思いもかけなかったこと−

(2005年2月26日)

昨年秋から年末にかけ、思いもかけなかったことが2つありました。
そのひとつが、これまで2回番外編で書いた、神戸大学マンドリンクラブにかかわることだったので、これも番外編とするつもりだったのです。
ただ、何となく書けないまま、日がたっていました。
今日、もうひとつの出来事があって、急に番外編ではなく本編で書くことにしました。

最初の思いもかけなかったことは、昨年の11月の出来事です。
東京で仕事があった際に、埼玉の大学へいっている息子と、晩飯を食べるため新宿で会いました。
息子が、小さなケーキの箱を持っていて、私に手渡すのです。え、何だ?
「少し遅くなったけど、ホテルででも食べて」。こうへいは、11月生まれで、誕生日ケーキだったのです。
なんと、息子の手作りの!
ホテルに帰って食べましたが、まさか、息子が作ったケーキを食べることがあるなんて思いもしませんでした。

次の思いもかけないことは、翌12月です。
例年通り、神戸大学マンドリンクラブから定期演奏会の招待状が届いたのを、今年はどうしようかと思いつつ、机の上においていたら、娘が、連れて行けと言い出したのです。
番外編その1、その2をお読みになった方はおわかりと思いますが、ちょっと普通のプログラムではないのです。
思わず、「ほんとに行くの」と尋ねたのですが、中学校の授業でギターを弾いたことがあるなどと、初耳のことを言い出し、結局、一緒に行くこととなりました。
25年以上も前に自分がいたステージを、まさか娘と聴く日がくるとは。

最後が今日、今度はその娘が舞台にいる番です。
なんと、戦争を知らないこうへいの、そのまた娘が、「洞窟」という劇でひめゆり部隊を演じます。
いったいどんな舞台になるのか想像もできなかったのですが、戦争を知っているかどうかはともかく、「生きたくても生きられなかった」少女たちを懸命に演じていました。
客席のほとんどは、こうへいよりはるかに若い人たちで、もちろん戦争など知るよしもないのですが、終わりにはかなりの人が涙を浮かべていたようです。

この舞台の最後に、火炎放射器に焼かれて倒れていった少女たちと先生を、ひとりひとりスポットで浮き上がらせていきます。そのバックに流れるのが、「花」です。

見終わった時には、この曲を、昨年来あたためていた「思いもかけなかったこと」に結びつけて音楽夜話にあげることは考えもしませんでした。
ただ、終わった後、明日の仕事のため東京へ向かう新幹線の車窓から夕日を見たとき、その色が、舞台のクライマックスでの火炎放射器をイメージした赤い照明に重なったのです。
そして、昨年12月のステージの後輩たち、さらに大昔の、こうへいとその仲間たちと、順につながっていきました。
今日、懸命に演じた娘たちも、若いときにしか得られない達成感と、そして、終わった後の何ともいえない淋しさを味わっているのかな。

そう思って、車中から携帯メールで、「とてもよかったよ」と送ったら、「せんきゅー」だって。


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